15億ドル評価額で交渉が進むNous Researchの立ち位置
オープンソースAI開発の急先鋒であるNous Researchが、15億ドルの評価額で新たな資金調達に向けて投資家と交渉中であることが明らかになった。同社は、MetaのLlamaシリーズなどのオープンウェイトモデルをベースに、独自のファインチューニングやアライメント技術を施した「Hermes」シリーズで知られるスタートアップである。巨大テック企業が数十億ドル規模の資金を投じてクローズドな基盤モデルを開発する中、Nous Researchはコミュニティ主導のオープンな開発体制を維持しながら、商用利用に耐えうる高性能なモデルを提供し続けてきた。
今回の資金調達交渉は、AIエージェントの需要急増と、それに伴うオープンソースモデルの重要性の高まりを背景にしている。クローズドモデルに依存するリスクを回避したいエンタープライズ企業にとって、カスタマイズ性が高く、オンプレミスやプライベートクラウド環境にデプロイ可能なNous Researchのモデルは有力な選択肢となっている。同社は調達した資金を、さらなるモデルの高度化と、分散型学習プロトコルなどのインフラ技術開発に充てる方針だ。
Hermes 3の技術的優位性と主要モデルとの性能比較
Nous Researchの代表作である「Hermes 3」は、単なるパラメータの微調整にとどまらず、高度な合成データ生成技術と独自の強化学習(RLHF/DPO)プロセスを経て構築されている。特に、エージェントとしての自律的な意思決定、複雑な指示への追従性、そして不必要な検閲を排除したニュートラルな応答性能において、ベースモデルであるLlama 3を凌駕する評価を得ている。以下は、Hermes 3 70Bと主要な競合モデルの性能および特徴を比較したデータである。
| モデル名 | 開発元 | MMLU (理解力) | HumanEval (コード) | 主な特徴・強み |
|---|---|---|---|---|
| Hermes 3 (Llama 3 70Bベース) | Nous Research | 81.2% | 76.8% | 高度なエージェント機能、指示追従性、検閲の少なさ |
| Llama 3 70B Instruct | Meta | 82.0% | 70.1% | 高い汎用性、強固な安全ガードレール |
| Mistral Large 2 | Mistral AI | 84.0% | 73.0% | 多言語対応、商用利用に最適化 |
| GPT-4o | OpenAI | 88.7% | 90.2% | 最高峰のマルチモーダル性能、クローズドAPI |
Hermes 3は、MMLUなどの一般的な知識ベンチマークではベースモデルと同等水準を維持しつつ、コーディング能力を測定するHumanEvalにおいてはベースモデルを大きく上回る数値を記録している。これは、開発者が実務で利用するエージェントや自動化ツールの構築において、より実用的なコード生成や論理推論が可能であることを示している。
分散学習DisTrOと開発者が取るべき選定基準
Nous Researchの技術的野心は、モデルの開発にとどまらない。同社が提唱する「DisTrO(Distributed Training Over-the-Internet)」は、低帯域幅のインターネット回線を経由して、世界中に分散したGPUリソースで大規模言語モデルを協調学習させるプロトコルである。これにより、単一のデータセンターに数万個のGPUを集積せずとも、耐障害性の高い分散環境でモデルを訓練することが可能になる。このアプローチは、GPUの調達難や電力不足に直面するAI業界において、新たな技術的選択肢として注目されている。
開発者やシステムアーキテクトが今後のAIインフラを選定する際、Nous Researchの動向は重要な判断材料となる。特定のプラットフォーマーによるAPIの仕様変更や価格改定、データプライバシーの懸念を考慮すると、Hermesのようなオープンウェイトモデルを自社環境にホストする価値は極めて高い。特に、自律型エージェントや複雑なワークフローの自動化を設計する場合、モデルの内部パラメータに直接アクセスでき、ファインチューニングが容易なHermesシリーズは、長期的な技術スタックの基盤として最優先で検討すべき選択肢となるだろう。


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